研究概要 |
昨年度に確立したマウス5系統についてその耐糖能を検討した。すなわち、インスリン遺伝子プロモ-タ-領域にインスリンI,インスリンII cDNAを逆向きに組み込んだプラスミドDNAを用いてトランスジェニックマウスの作製を試み、“ヘテロ"にプラスミドが組み込まれた5系統を確立した。制後5週後に自由摂食下でその血糖値を比較した所、トランスジェニックマウス(n=13):174±21mg/dl,非トランスジェニックマウス(n=38):183±15mg/dlと有意差を認めなかった。さらに生後6ヵ月後、腹腔内糖負荷試験を行った所,トランスジェニックマウス(n=19):Vor97±10mg/dl,30' 182±23mg/dl,60' 145±15mg/dl,120' 115±17mg/dl,非トランスジェニックマウス(n=9):Vor94±15mg/dl,30' 181±34mg/dl,60' 148±20mg/dl,120' 119±21mg/dlと有意差を認めなかった.また、対立遺伝子の両方にプラスミド遺伝子が組み込まれたトランスジェニックマウスにおいても血糖の上昇は認められなかった.また膵臓におけるインスリンmRNAの低下は確認できなかった。従って、その解釈は難しくなるが、血中インスリンの動態あるいは、膵インスリン含量さらに膵う氏島β細胞のインスリン含量の螢光抗体法による測定などが今後検討すべき事項であり、これにより糖尿病の発症におけるインスリン遺伝子の役割が明らかになると思われる。可能性としては、アンキセンスDNAを用いてインスリン遺伝子の発現を部分的に抑制しても、マウスにおける糖尿病あるいは耐糖能異常が生じないことはありうる。
|