研究概要 |
1.low-density lipoprotein(LDL)および変性LDLの血小板機能に及ぼす影響:(1)LDLは正常ヒト血小板にKd=58nM,1750/cellsの親和性で結合する。LDLは単独で一過性の細胞内Ca^<2+>上昇と形態変化を引き起こすが,TXB_2合成やリン酸化反応はおこさなかった。LDLはKd付近の濃度でthrombinやcollagenによる血小板凝集を増強させた。(2)変性LDLのヒト血小板への結合様式はnativeと比較し,Kd,Vmaxともに有意な差を認めなかった。変性LDLは,血小板凝集,放出を濃度依存性に抑制した。酸化脂質であるリゾレシチンは血小板凝集,放出を濃度依存性に抑制した。このリゾレシチンはnativeのものに比ベこの変性LDLに有意に増加していた。 2.high-density lipoprotein(HDL)の血小板機能に及ぼす影響: (1)apoE含量の多いHDL_2は少ないHDL_3に比べて,血小板凝集抑制が強く,apoEがHDLのもつ血小板凝集抑制作用に寄与することを示唆した。apoE-rich HDLやCETP欠損症患者より得たliposome(apoE・DMPC)は濃度依存性に凝集を抑制し,細胞内Ca^<2+>上昇も抑制した。apoE・DMPCは血小板膜よりcholesterolを遊離させると言う興味ある効果も示され,膜のcholesterol含有量の低下が機能抑制の一因と思われた。しかし,apoE欠損患者HDLも強力な血小板凝集抑制作用があり,しかも脂質構成は正常人と大きな違いはなかった。しかし,このHDLにapoEを組み入れたHDLは更に強い抑制作用を示した。したがって,apoEはHDLの抑制作用の強力な要素であるが,唯一のものではないことが示唆された。(2)apoEのisoformの違いとHDLの抑制作用との間に相関が有るか否かを正常人及び患者血清よりHDL fractionを調整して調べた。いまのところisoformの違いによるHDL抑制作用に差はみられないようである。(3)リン脂質・コレステロール比が増加したliposomeのほうが引き抜き作用が強いことも示された。
|