研究概要 |
まず、ILー2受容体α鎖,β鎖の各種血球における発現を調べた。リンパ球では,非刺激状態では,α鎖はCD4(+)T細胞の一部にのみ弱い発現が認められる。一方,β鎖は,CD3(+)CD8(+)細胞の一部,B細胞の一部とCD56(+)細胞(NK細胞)の大部分に発現がみられた。PHA等で刺激すると,α,β鎖とも,CD4(+)T,CD8(+)T,B細胞いずれにおいても発現がみられるが,β鎖よりもα鎖の発現増強が著るしい。アイソト-プ標識ILー2結合試験では,α鎖,β鎖単では,それぞれ,低,中間親和性,両鎖によって高親和性受容体として機能するとするモデルに合った結果が得られた。ILー2依存性増殖に関しては,β鎖のみを発現するNK(LGL)細胞やαβ鎖を発現するT,B細胞では増殖が認められたが,α鎖のみを弱く発現しているCD4(+)T細胞では増殖が認められず,β鎖がILー2シグナル伝達に重要であるとの報告と矛盾しない結果であった。次に,単球では,ILー2で活性化されてヒト白血病細胞傷害作用が誘導され,この傷害作用にはTNFが関与している事が明らかになった。傷害作用誘導はβ鎖に対する抗体で抑制されることから,β鎖がこの機能発現に重要であると考えられた。リンパ球,単球以外の血球では,K562やYUTーK3(myeloid)など一部の細胞株でα,β鎖の,さらに,慢性骨髄性白血病急性転化例の芽球にα鎖の発現が,それぞれ認められたことから,これら顆粒球,赤芽球(?)系の細胞においても,ILー2が何らかの機能を果たしていることが考えられた。
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