研究概要 |
成長期のラットにトレ-ニングを負荷し、成熟期に至ってトレ-ニングを中止した場合、骨にどのような影響が及ぶのかについて、骨量と力学的特性の面から検討を加えた。Wistar系雄ラット(n=53)を用いトレ-ニング後に通常飼育を行う脱トレ-ニング群(DT群,n=28)と安静コントロ-ル群(C群,n=25)に分けた。小動物用トレッドミルを用い,4週齢より週5日の頻度で10週間の走トレ-ニングを負荷した。最終走行条件は上り5度,35m/分,60分/日であった。トレ-ニング終了5週後,10週後にラットを屠殺し、大腿骨,〓骨,上腕骨,骨盤骨を摘出,長骨と脱脂乾燥骨重量を測定した。また前腕骨を除く四肢骨singleーphoton absorptiometryに基づき,骨塩量を測定した。大腿骨は3点曲げ試験により荷重一変形曲線からスティフネス及び吸収エネルギ-を算出した。その結果,トレ-ニング終了時、大腿骨の力学的特性を示すすべてのパラメ-タ-において両群間に有意な差は認められなかった。一方、脱脂乾燥骨重量を測定したすべての骨でDT群がC群に対し有義な高値を示した。骨の長軸成長の指標となる骨長,横軸成長の指標となる骨〓部骨塩量においても、DT群がC群に対し有意に高値を示した。また、脱トレ-ニング期間中においても、脱脂乾燥骨重量,骨長および骨塩量はDT群がC群よりも有意な高値を示した。本研究において10週間の走トレ-ニングは大腿骨の力学的特性に影響を及ぼさなかったが、骨量を示す脱脂乾燥骨重量では、大腿骨,〓骨,上腕骨および骨盤骨のすべての骨で有意な増加がみられ、それらは骨の長軸と横軸の両成長の促進に起因していることが示唆された。また,トレ-ニングによって引き起こされたこの骨量の増加は、その後10週間にわたる脱トレ-ニング期間も維持された。ことながら,骨に対するトレ-ニング効果の残存性が示唆され,成長期における運動の重要性が示された。
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