研究概要 |
ヒト肝細胞増殖因子(hHGF)は,初代培養肝細胞の増殖促進作用を含む種々の生理作用をもつサイトカインである.HGFはheavy chain(H鎖)に4個のクリングル構造をもち,light chain(L鎖)がセリンプロテア-ゼと高い相同性を示すなど,特微的なドメイン構造を有する.これらのドメイン構造の機能について,それぞれのドメイン構造を欠損する変異体を作成し解析した. それぞれの変異体について初代培養肝細胞の増殖促進作用,MethA細胞の増殖抑制作用およびMDCK細胞に対する細胞分散作用につて解析したところ,1番目と2番目のクリグル構造,あるいはL鎖を欠損する変異体ではすべての活性が失われ,また3番目あるいは4番目のクリングル構造を欠損する変異体は,すべての作用についてそれぞれ約30%および10%の活性を保持していることが明らかになった.またhHGFとMethA細胞のcーmet蛋白との結合に対する阻害効果を解析したところ,1番目あるいは2番目のクリングル構造を欠損する変異体は阻害活性を示さなかったが,3番目と4番目のクリングル構造あるいはL鎖を欠損する変異体は阻害活性を示した.さらにcーmet蛋白のチロシンリン酸化促進活性について解析したところ,1番目と2番目のクリングル構造あるいはL鎖を欠損する変異体は促進活性を示さなかったが,3番目あるいは4番目のクリングル構造を欠損する変異体はそれぞれ約30%および15%の活性を示した.以上の結果から,hHGFのcーmet蛋白への結合にはH鎖が重要な役割をしており,特に1番目と2番目のクリングル構造はその結合に必須であることが明らかになった.また3番目と4番目のクリングル構造も完全な結合に寄与していることが明らかになった.さらにL鎖はcーmet蛋白への結合に伴うcーmet蛋白のチロシンキナ-ゼ活性の促進に必あると考えられる.
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