研究概要 |
フィトクロムは緑色植物に存在する色素蛋白質で、赤色光吸収型Prと近赤外光吸収型Pfrの間を可逆的に光変換する。Pfrが生理学的な活性型で、PrがPfrに光変換する事によって様々な生理調節反応が誘き起こされるが分子機構は未知である。研究代表者等は昨年度、既にX線小角散乱法で得ていたフィトクロム分子構造モデルをさらに精密化すべく、結晶解析に使用できるlargeフィトクロム単結晶の作製条件を追及した。今年度方針を少し変えて以下の研究を行った。 (1)前年度各種の沈殿剤を用いてlargeフィトクロムの結晶化を試みたが、単結晶の作製には成功しなかった。largeフィトクロムはアモルファスな沈殿を作り易くまた分子量も大きく後の解析も複雑となる事から、同フィトクロムをトリプシン処理して得られる59kDa発色団含有フラグメントの結晶化条件の追及を行い、硫酸アンモニュウムを沈殿剤とする結晶化が有望であるという結果を得て、現在結晶解析可能な単結晶を得るべく実験を継続中である。(2)上記の研究とは別に、結晶解析を行う際に必要となる発色団の分子構造の情報を得るべく、共鳴ラマン散乱法を用いた解析を行い、PrとPfrが異なるH^+化構造を持つ事を見つけ光変換にともなって分子内H^+移動反応を起こす可能性を示唆した(Tokutomi et al.,1990,FEBS Lett,;Mizutani et al.,1991,Biochemistry)。(3)共鳴ラマン散乱法で得られた発色団子構造に関する情報を考慮して、吸収スペクトルを良く再現するπ電子系を持つ発色団の子モデルを組み立てた(Tokutomi et al.,Photochem.Photobiol.1992,in press)。(4)配向フィトクロム試料の直線偏光二色性(LD)の測定結果から赤色光および青色光吸収帯遷移モ-メントとフィトクロム分子内二回回転対称軸との相対角を決定し、これらの結果から発色団の分子内配向の三次元モデルを組み立てた(徳富、1991、組織培養;Tokutomi et al.,Photochem.Photobiol 1992,in press)。現在、結晶解析可能な59kDaフラグメントの単結晶の作製を継続中であり、これが完成した暁には上記で得た結果を用いて構造解を行う予定である。
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