研究概要 |
腫瘍組織内の低酸素,無酸素癌細胞に対する放射線効果を増強するために,放射線増感剤も,酸素効果を期待した血流改善剤も,放射線と個々に併用して,充分な効果をあげ得なかった。この両者の欠点を補うように併用をおこなって,マウス移植エールリッヒ固型腫瘍で検討した。血流改善剤ー低分子デキストランとウロキナーゼ混合液と放射線増感剤マイソニダゾールを投与すると,マイソニダゾールの必要有効投与量を約40%減量し得ることを見出した。そこで血流改善剤による薬剤の腫瘍組織への集積増強効果について,分子量の大きいRI標識モノクローナル抗体を用いて検討したところ,上記混合液に薬剤集積増強効果が認められた。また同時に検討した血管透過性亢進剤でもあるTNF(腫瘍壊死物質)も同様効果が認められ,さらに血流改善剤とTNFの併用は相加的に集積増強効果を示した。ヒト腫瘍に近い大きさのV_X-2腫瘍を用いて,上記結果を踏まえて,血流改善剤とTNFの両者をマイソニダゾールと同時併用したところ,さらに放射線の抗腫瘍効果の増強が得られ,マイソニダゾールの必要有効投与量を60%減少,即5200mg/kg投与でも充分な放射線増感効果が得られた。放射線とTNFのみの併用では増感効果は認められなかった。 血流改善剤,TNF,マイソニダゾールの三者のシステミックな併用の結果を踏まえて,マイソニダゾールの改良型であるRK-28について検討した。同時にDNA修復阻害剤として,抗ウイルス剤であるAra-Aの併用を検討した。Ara-Aは放射線に対して併用効果を示さなかった。RK-28は血流改善剤,TNFと併用してマイソニダゾール同様極めて有効であった。 血流改善剤,TNF,放射線増感剤の三者併用は,放射線効果を著明に増感し,臨床的検討をおこなうに値する方法であると考えられた。
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