研究概要 |
本研究は体内局所での測定法である磁場焦点法を高磁場・高分解能NMRに適用し,測定領域の限局精度、分解能などの技術的検討,及び各種臓器のリンエネルギ-代謝動態の観察を通じて,本法の応用面を基礎的に明かにする目的で立案したもので,下記の成果を得た。 1.前年度本課題で試作した6.3TNMR装置用焦点磁場発生器及びその駆動・制御システムを改良し,各種測定パルス系列に同期可能とした。 2.前記システムを用い, ^1H核 ^<31>P核を対象に局所スペクトル測定のための基礎的課題とし徹誠駆動電流と焦点領域、S/N,分解能とその関係などを検討した。この結果,駆動電流の増加により焦点領域を縮小できること,250mA駆動時では焦点領域中心の水信号のみが観測され,磁場焦点前に比べてS/Nは1/8に低下するがピ-ク半値幅は0.18ppmとほとんど変化しないこと,また焦点領域にはATP,その周囲にリン酸を置いたファントではATPピ-ク半値幅は4ppmと8倍程拡がるが,周囲からの信号との識別は十分可能なことを明かにした。 3.ラット肝を対象に,摘出潅流法と腹壁上からの表面コイル法との比較により,腹壁由来の信号が肝の信号に20%前後介在することを明かにし,磁場焦点法による被測定部位局所化の必要性を確認した。 4.リンエネルギ-代謝面から各種臓器の機能を解析した。まず,正常及び甲状腺機能低下症ラットの摘出潅流心を用い、心仕事量と心周期内高エネルギ-リン酸化合物の変動を観察し,その消費量の差異を明らかにした。次で,70%切除したラット肝の再生をエネルギ-代謝面から検討し,肝再生の機能的評価を行った。さらに,ラット眼を対象にガラクト-ス白内障形成課程,保存角膜,エンドトキシンによるブドウ膜炎などのエネルギ-代謝動態の解析を行うなど,本法による生理・生化学的機能解析の有用性を明らかにした。
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