研究概要 |
本研究は,コラ-ゲンおよびその遺伝子をプロ-ブとして使用して,多細胞動物の起源を推定するために計画された。現在までの研究によって,コラ-ゲンは,カイメンからヒトに至る全ての多細胞動物に存在すること,多細胞植物や単細胞生物には,存在しないことなどが明らかになっている。従って、コラ-ゲンおよびその遺伝子は,生命が多細胞体制をとろうとした時,重要な役割を果たしたと考えられる。私は,このような考え方から,コラ-ゲンとその遺伝子の比較生物学的研究を2年間にわたって展開した。得られた成果を列記する。 1.ウニ類のコラ-ゲンとその遺伝子に関する研究。 バフンウニとアメリカムラサキの殻からコラ-ゲンを精製し,これらのコラ-ゲンのα鎖構成を決定した。3本のα鎖(α120,α90,α140)を分離した。α120とα140鎖をコ-ドしている遺伝子(cDNA)をクロ-ニングすることに成功しHpcol1と命名した。Hpcol1の全塩基配列を決定した。 2.中生動物(ニハイチュウ)のコラ-ゲン遺伝子に関する研究 最も単純な体制をもつ多細胞動物(ニハイチュウ)は,Hpcol1に相同なコラ-ゲン遺伝子を持たないことを明らかにした。 3.カイメンのコラ-ゲンに関する研究 ムラサキカイメンの解離細胞が再集合して,“多細胞化"する時に,発現する58kdaのコラ-ゲン様ペプチドを発見した。細胞が集合して組織化する時に重要な働きをしていると考えられる。 4.線維芽細胞の器官特異性に関する研究 コラ-ゲンを合成する主要な細胞の一つである線維芽細胞をマウスの皮膚,肺及び心臓から分離して,いくつかの性質について比較検討した。それぞれの線維細胞に由来器官依存性があることを明らかにした。
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