研究概要 |
アトムプローブFIMは個々の原子を観察すると同時に,飛行時間測定による個々の原子の質量分析を行なうことのできる究極的な材料解析手法である.しかし試料の先端の曲率半径が約200nm以下でなければならないという極めて困難な試料形状の制約により,一般にバルク状金属材料以外の分析に適応するのが困難であると考えられていた.例えば試料形状が液体急冷法により作製されたリボンや,スパッター法や蒸着法により作製された薄膜の場合,従来の手法ではFIM用の試料を作製することが困難であった.ところが近年の材料科学の発展により,機能材料の多くが薄膜やリボン状の非バルク材料である.さらにナノスケール解析は金属系材料に限らず半導体,セラミクス材料の世界でもその重要性がますます高まってきている.半導体セラミクスのナノ分析はこれまで殆ど分析電子顕微鏡の独壇場であったが,これらの非金属材料にもアトムプローブ法を適応できれば,アトムプローブの応用範囲は飛躍的に増大する.アトムプローブが装置的に完成された今,その応用範囲をますます高めるためにも,薄膜や非金属材料からの新しいFIM用試料作製法の確立が強く望まれている.本研究は以上の様な要求に応えるために行なったもので,(1)マイクロエレクトロポリシング装置の作製(2)フォトリソグラフィーによる金属薄膜かのFIM試料の作製(3)FIM試料研磨用イオンミリング装置の試作の3つのサブプロジェクトからなる総合的なFIM tip作製法を確立した.これによって現在我々のアトムプローブグループでは従来アトムプローブでは非常に困難であった磁気記録媒体用金属薄膜の解析,磁気記録用金属薄膜ヘッドの解析金属の結晶粒界の解析が日常的に可能となった.さらに半導体,酸化物超伝導体などの材料にもこれらの手法を適応していく予定である.
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