研究概要 |
1.平成2年度で開発されたアルミニウム鏡面処理法ーOMCP(OrganoーMechanochemical Polishing)法ーを用いて極高真空容器を製作した.OMCP法は,数nmオ-ダという極めて薄い表面酸化膜厚を実現しつつ表面を鏡面化する初めてのアルミニウム表面処理技術で,本研究では真空容器のみならず,バルブ,液体窒素シュラウドの内面処理にも適用された. 2.極高真空用排気ポンプとして新しいチタンサブリメ-ションポンプ(TSP)を開発した.これは従来のTSPの最終的性能が(1)動作時の発熱によるガス放出,および(2)ゲッタ-効果で取り込んだ不純物分子の再放出,の二者に規定されているとの認識に立ち,(1)に対しては従来のヒ-タ傍熱過熱方式からより加熱効率のよい電子衝撃直接加熱型へ,また(2)に対してはチタン蒸着面にヒ-タを組み込んで充分な吸着分子の追い出しが可能となる形に,それぞれ改良を行ったものである. 3.従来から超高真空領域の全圧計として用いられてきたエクストラクタ-ゲ-ジを極高真空領域で使用する為の方法論を確立した.すなわち,同ゲ-ジのレフレクタバイアス電圧を変化させる事により,ゲ-ジ毎に異なるX線発生による測定誤差を正しく見積もれる事を見いだした. さらに極高真空用全圧計としてイオン分光ゲ-ジを開発した.これはイオン軌道を180゚偏向させてエネルギ-分光する事により,従来,極高真空測定のネックとなっていた(1)イオンコレクタからのX線発生による測定誤差,および(2)グリッドの電子衝撃脱離イオンによる測定誤差を同時に取り除くよう考案されたゲ-ジである. 4.最後にこれらを組み合わせて極高真空排気試験を行い,排気開始後29時間のきわめて短時間に10^<ー12>mbar台の極高真空を実現する事に成功した.
|