研究概要 |
1)3点曲げ超小型応力腐食割れ試験機,および水溶液環境下で流れるイオン電流を,試料と探針の間を流れるトンネル電流に比べて小さくするために,2)探針と試料それぞれの電位を設定することのできるバイポテンショスタット機構を有する特殊腐食セルと3)探針先端の一部を除いてガラスコ-トしたガラスコ-ト探針によりなる,その場観察走査トンネル顕微鏡(STM)システムの試作を行った.これを用いて,まず空中において,鋭敏化熱処理を施したオ-ステナイト系ステンレス鋼SUS304の粒界腐食面の超高倍率観察を行った.STM観察による面内分解能はnm程度,垂直方向分解能はnm以下のオ-ダまで可能であり,超高分解能の三次元観察が可能であること,粒界腐食は粒界部分でまず孔食が発生し,それらの孔食が連結して線上の腐食形態となること,さらに腐食が進むと粒界部分で20nm程度の段差が生じるとともに,粒界をはさんだ二面は微小な角度でお互いに傾斜することを明らかにした.また,応力腐食割れき裂の先端形状は,き裂の先端に向かって徐々に浅くなっていくこと,き裂の拡幅化には,i)き裂壁面がV字型に溶解する機構,き裂壁面の結晶学的な優先方位に沿って溶解する機構の2種類あることを明らかにした.つぎに,本試作STMシステムを用いて,腐食溶液中のステンレス鋼の表面超微視その場観察を行い,腐食ピット初生過程からその成長過程を含んで,ピットの微視的変化をリアルタイムに捉えることに初めて成功して,本試作システムによる腐食損傷の液中その場超微視観察が可能であることを確認した.さらに,応力腐食割れ試験のように,試料表面に腐食生成物が厚く生じる場合は,トンネル電流の検出が困難となる場合があり,このような場合に対しては,原子間力を測定することにより3次元形状を求める,走査型原子間力顕微鏡(AFM)が適していることなど,貴重な成果が得られた.
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