研究概要 |
本研究では,超音波を使って金型内の樹脂の成形・凝固状態を射出成形中または射出成形直後に,金型の外側から金型を傷つける事なく簡単に測定する方法について検討した.具体的には,超音波による,樹脂の流入状況の検出,金型キャビティ内樹脂の固化状況の検出,樹脂の結晶化度の測定,金型内樹脂圧力の測定,金型の締め付け力変化とばりの検出,について検討した.その結果,以下に示すような結論が得られた.(1)金型キャビティ内に樹脂が流入すると音響インピ-ダンスが変化するため,超音波を金型キャビティに向けて投射して金型キャビティ表面からの反射波の振幅を測定することにより,金型キャビティ内への樹脂の流入を検出できる.(2)高密度ポリエチレンのように,融点付近で音速が大きく変化する樹脂では,固化状態の音響インピ-ダンスと溶融状態の音響インピ-ダンスが大きく異なるために,金型キャビティ内に充填された樹脂の固相と液相との境界面からの超音波反射波を検出できる.さらに,この反射波の時間的変化から,固相の成長挙動や樹脂の厚さ方向の温度分布を求められる.(3)樹脂の温度が一定であるとき,縦波音速と結晶化度の間には一定の関係があり,樹脂の縦波音速を超音波を使って測定すれば,樹脂の結晶化度を非破壊で測定できる.また,焦点型超音波送受信子を使う事により,局所的な結晶化度を測定できる.(4)金型キャビティ表面に金属箔を貼り,その境界面からの超音波反射波の反射波高比から金型キャビティ内の圧力や圧力分布を容易に測定できる.また,金属箔とそれに接触する相手材の接触面あらさや硬さなどを考慮した,圧力と反射波高比の関係を表す実験式が得られた.(5)超音波を金型合せ面に投射する事によって,金型キャビティ内の樹脂の充填・固化にともなった型締力の変化やばりの検出を行うことができる.
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