研究概要 |
ZnOは,その化学組成がZn原子過剰のためにn形の半導体で,また,その結晶構造(6mm)から圧電性も示す物質である.以下に本研究の期間中に得られた成果をまとめる. 1.育成方法の確立(単結晶の高純度,大形化)育成方法は,温度圧力条件は人工水晶の合成と同等であるが,水晶と同程度の成長速度を得るには,3〜4mol KOHと1.5mol LiOHの溶媒を使用する必要がある.また,酸素分圧を得るために酸素発生剤としてH_2O_2を添加するために,耐化学性の白金ライニングで育成系を完全に密封する必要がある.H_2O_2濃度0〜0.3molを添加することにより0〜30kg/cm^2の酸素分圧が得られ,結晶中のZn原子の過剰量を最小0.3ppmまでに減少でき,高純度化がこの方法で可能であることが示された.現在までに得られている単結晶の大きさは20×6×6mmであるが,単結晶の大形化については,別途,民間企業との開発研究で検討中である. 2.育成ZnO単結晶の評価(ストイキオメトリ,電気的光学的諸特性)ZnOの化学量論比(ストイキオメトリ)の評価は,クーロンメトリ法で行い,それらの試料について電気的,光学的特性を調ベた.高純度ZnOでは10^6〜10^8Ω・cmの高抵抗率を示す.また,波長吸収および光導電の波長依存性から,この高純度結晶はZnOの基礎吸収端385nmを示している.10^<-1>〜10^1Ω・cmと低い抵抗率の結晶(Zn過剰量10〜20ppm)ではLi拡散処理をすることにより10^7Ω・cmまで変化することができることがわかった.誘電的圧電的諸定数はIRE standards(July 1961)に従って求められた.ε_<33>=11.0,ε_<11>=9.25と異方性がみられた. K_<33>,K_<31>;0.445,-0.120, d_<33>,d_<31>;1.32,-0.35(X10^<-11>C/N),fr・l=2348Hz・m. 目下,ZnO単結晶のバルクを利用する超音波センサー素子の開発を民間企業と検討中で,この研究で得られた成果をさらに発展させる.
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