研究概要 |
前年度の研究より,システムの高性能化には耐雑音特性の向上,ジョセフソン接合の高品質化が必要であることが分かった.また,そのシステムで酸化物超伝導体等の特性を測定することから,それらと金属超伝導体との接触を調べる必要が生じた.平成3年度は以上3つの課題を中心に研究を進めた.以下に得られた知見を述べる. 1.[ジョセフソン接合の高品質化]接合の高品質化には電極を形成するNbの成膜レ-トを大きくすることが重要であることが明らかとなった.これは速い成膜を行うと不純物の取り込みが少なくなり,より長い距離にわたって超伝導の秩序化が起こるためと考えられる.また,トンネル障壁層となるA1の酸化はA1表面からの酸素の拡散によって形成されることが実験的に確認された. 2.[システムの耐雑音特性の向上]システム内の配線のインピ-ダンス整合をとり,外来ノイズを抑制した結果,時間分解能10ps,電流感度10μAのジョセフソンサンプラが得られた. 3.[金属超伝導体と異種物質との接触]主に酸化物超伝導体との接触について研究した結果,酸化物超伝導体とNbの間に貴金属を挟むことで両者の間で超伝導コンタクトがとれることが明らかとなった.しかし,貴金属からの常伝導電子の影響で酸化物超伝導体表面での超伝導性が著しく劣化することも分かった.この点の解消には,酸化物超伝導体と同じ結晶構造を持つ常伝導体を用いることが有効であることを新たに見いだした. 4.[高分解能高感度波形観測システムの構築]上の3つの研究成果から波形観測システムを構築した.現在のところ上記2に示した性能のものが得られている.また,Nb,Alの表面インピ-ダンスを調べたところ,BCS理論から予測される値とほぼ一致した結果が得られた.
|