研究概要 |
希土類長寿命蛍性錯体をラベルとし透明高子フィルムを計測媒体とする新しい時間分解蛍光イムノアッセイシステムを構築することを目的に,(1)希土類錯体の長寿命発蛍光現象が配位子〜金属間のエネルギ-移動に基づくものであることからその適合配位子の探索と分子設計および発光環境設計の確立,(2)可塑剤含有ポリの塩化ビニル(PVC)フィルムのマトリックス分離および発蛍光反応媒体としての評価検討,を行った。研究成果をまとめると, 1.パルス窒素レ-ザ-を用いる時間分解蛍光測光システムを組み上げ,〜msレンジにおける高精度・高時間分解能蛍光測定装置を確立した。 2.エネルギ-移動発光用キレ-ト配位子として,八座の芳香族ポリアミノカルボン酸類を見いだした。これらの配位子は,光吸収を行う'アンテナ'部分としてキノリン環やベンゼン環を有すると同時に希土類金属(ランタノイド)イオンの大きな配位数8を満足して配位水子による振動モ-ド失活を防止できる構造を持つ。EuーQuin2,TbーBAPTA系が優れた発光特性を与えることを明らかにした。 3.Eu(III)tta錯体(tta:テノイルトリフルオロアセトン)は1,10ーフェナントロリン(phen)と付加錯体を生成して蛍光強度が増大するが,さらにアルカリ性容液からアニオン性錯体〔Eu(tta)_4〕^ーのイオン対がクロロホルムに分配し,10倍もの蛍光増感を達成できることを見いだした。 4.可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)を含有する(PVC)を抽出濃縮媒体とするための基礎分配デ-タ収集と蛍光媒体としての評価を行い,前出の〔Eu(tta)_4)〕^ー錯体に対しては良媒体ではないが,エチルバイオレットでは10倍強の蛍光増強が見られた。溶質と高分子/可塑剤溶媒系のマッチングにより,優れた分離特性と蛍光増感特性を合わせ持つシステムが生まれる可能性を見いだした。
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