研究概要 |
昨年度の本研究助成を購入した設備備品(卓上型恒温恒湿器)を用いて非石綿強化繊維が異なるセメント系建材の飽水板状試片をJISあるいはASTMの各方法に準拠して凍結融解試験および凍結融解の繰り返しサイクルに伴う動弾性係数の変化,吸水率の変化,曲げ強度(破壊強度やタフネス値)の変化など材料の機械特性や組織の劣化に関連する諸因子を測定した。また,本研究の主目的の内容を構成する課題,即ち,申請者(代表者)が開発した一方向熱流条件下での凍結融解法による耐凍害性試験および上記の各因子の測定を上記と同種試片を用いて実施した。得られた結果の一部は別表(研究発表)に示すように関連学協会の論文投稿及び研究発表を行なった。本年度実施分の研究成果を以下にまとめて示す。 (1)非石綿繊維強化セメント系建材の耐凍害性の向上には,吸水率の低減,繊維結束空隙の低減,製造法に固有的に発生する組織欠陥(例えば,抄造法における抄き重ね層間のラミネ-ション)の低減,細骨材(本研究ではフライアッシュ)の添加が有効である。 (2)上記建材が実際に使用される場合の凍結融解時の熱流方向性を類似した一方向凍結融解試験法によって計測される残留膨張率変化は,製造法が同種の建材に対して従来のASTM(Cー666A法)による耐凍害性試験試料の相対動弾性係数変化率と相関性を示し,一方向凍結融解試験法は従来法に比較して極めて簡便かつ信頼性の高い試験法であることを明らかにした。 (3)建材研磨面の電顕画像と電算機との組み合せによって得られる細孔形状や直径の2次元分布,細孔の3次元連結組織を数値化することにより建材の耐凍害性を高信頼性のもとに間接評価できることを明らかにし,それら解析のための具体的な手法を確立することができた。
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