研究課題/領域番号 |
02556015
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
製造化学・食品
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢野 俊正 東京大学, 農学部, 教授 (00011867)
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研究分担者 |
石坂 昭三 筑波大学, 生物科学系, 教授 (10062499)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
16,400千円 (直接経費: 16,400千円)
1991年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1990年度: 15,700千円 (直接経費: 15,700千円)
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キーワード | ゾル-ゲル転移 / 臨界指数 / 動的光散乱 / パーコレーション / 相関距離 / パ-コレ-ション / 動的ゲル化 |
研究概要 |
強いゲル化を起こすポリアクリルアミドと弱いゲル化を起こすアガロースを試料とし、系のマクロな性質である力学物性とミクロな分子レベルの性質を反映する光散乱を計測し、ゾル-ゲル転移点近傍における臨界現象の視点から解析を試みた。 ゾル-ゲル転移点近傍のポリアクリルアミド・ゾルのクラスター半径分布を求めるために、動的光散乱測定を試みた。散乱光強度の時間変化からゆらぎの自己相関関数が求められ、この相関関数から求められる拡散係数から、Stokes-Einstein式よりクラスター径を算出した。重合反応開始直後クラスター径分布にまず単一のピークが生じ、反応の進行に伴いさらに大きな第二のピークが現れた。第二のピークは反応の進行に伴い大きくなるのに対し、第一のピークは反応が進行しても大きさはそれほど変わらなかった。この結果から、まず一次クラスターが生成し、この一次クラスターが重合して二次クラスターを形成することが示唆された。二次クラスターの大きさは、ゲル化点に近づくにつれ発散する傾向を示した。濃度についてスケーリングすると、ゲル化濃度は粘性率測定から求められた値とほぼ一致し、また臨界指数は0.84となり、パーコレーション・モデルから予想される相関距離の臨界指数(0.9程度の値が予想されている)に近い値が得られた。 また、非共有結合でクラスターを形成するアガロースにおいても、動的光散乱法によりゾル中のクラスター半径分布を測定することが可能であった。アガロースは共有結合による架橋点を形成しないため、本来明確なクラスターの定義は困難であるが、クラスターに相当する部分の大きさの分布と考えればパーコレーションの考え方が適用できると考えられた。なお、本研究で用いたアガロースは45℃のデータからかなり広い分子量分布をもっていることが示唆された。平均クラスター半径は濃度が増しゲル化濃度に近づくにつれて大きくなり発散する傾向を示した。この発散挙動はスケーリング則で良好に記述でき、27℃のとき平均クラスター半径と濃度のデータからfittingによりゲル化濃度と臨界指数を求めると、ゲル化濃度は4.5×10^<-3>wt%、臨界指数は0.98となり、相関距離の臨界指数の理論値に近い値が得られた。温度に関しても、温度が低くゲル化温度に近づくにつれて、クラスター半径分布は粒径が大きい方へシフトした。また、分布の形も40.0℃以上の温度条件では大粒径側に長く裾を引いているのに対し、さらに温度が低くなると、裾が消えていることがわかった。濃度0.15wt%のときクラスター平均半径と温度のデータからfittingによりゲル化温度と臨界指数を求めると、ゲル化温度は32.7℃、臨界指数は1.36となった。推定された臨界指数は理論値よりもかなり大きな値となった。 以上の結果により、弱いゲル化を起こすアガロースに関しては若干の問題点を残してはいるが、ゾル-ゲル転移点近傍での物性変化を記述する理論として、パーコレーション、スケーリングといった考え方が非常に有用であることが、クラスター半径分布を計測することにより明らかとなった。
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