研究概要 |
棚栽培されているブドウの管理・収穫用ロボットの開発を目的とし,まず対象物の3次元位置,摩擦抵抗,切断抵抗等の基礎的物理特性を測定した上で,5自由度極座標型マニピュレータおよび把持,切断,押出の3つの機能を有する収穫用ハンドを試作した。さらに,その収穫用ハンドをマニピュレータ先端に装着し,収穫実験を行った。その結果,ブドウの果房はほぼ水平面上に存在するため,5自由度マニピュレータをCP制御することにより,ほぼ良好に接近可能であり,果房でなく穂軸をフィンガにより把持し,切断する方法で収穫可能であった。次に,視覚センサを開発するため,まずブドウ各部位の分光反射特性を測定し,識別に適した波長の選定を行った。その結果を基にして,識別実験,位置検出実験,さらにマニピュレータおよび収穫用ハンドを用いた収穫基礎実験を行った。その結果,各部位の特徴的な吸収帯に透過率を有する干渉フィルタを用いることにより,異なる色を呈する部位同士はもちろんのこと,同系統の色を呈する部位同士の識別も可能であった。また,視点の移動による位置検出方法を用いた穂軸,果房の検出精度も,収穫作業に対しては,ほぼ満足できるものであった。これに加えて,本ロボットに汎用性をもたせ,ロボットによるブドウ生産システムの効率化を計るため,ハンド部の交換によって作業が可能と考えられる整房,摘粒用ハンドを試作した。そのハンドを用いて基礎実験を行った結果,ほぼ良好な整房,摘粒作業が可能であり,本作業のロボット化の可能性を確認できた。さらには,前述した視覚部および収穫用ハンドを装着したマニピュレータを走行部に搭載し,岡山大学附属農場において,収穫実験を行った。その結果,栽培様式が整っていれば,ほぼ収穫可能であった。今後の課題として,摘粒・整房ハンドの圃場における有効性の確認および走行部の自律走行等が残された。
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