研究概要 |
本研究の最終目的は自己免疫性水疱症である類天疱瘡の抗基底膜部(BMZ)抗体の検索を従来の蛍光抗体法ではなく,分子生物学を応用した方法で作成された合成ポリペプチド抗原を使用した新しい検査法によって測定することであった。 我々は人種の異なる日,英,米の類天疱瘡患者血清を集め,従来の免疫蛍光法,最近導入された免疫ブロット法,免疫沈降法の三者を比較検討し,表皮基底膜部に対する抗体が等しく多様であることを見い出した。同時に主要な抗原蛋白の1つである170kD蛋白と免疫蛍光法で検出される表皮下層細胞表面への反応性が相関することを見い出した。次にマウスcDNAライブラリ-をヒト抗BMZ単クロ-ン抗体5Eにより免疫スクリ-ニングし,表皮基底膜部抗原蛋白のC端120kDをコ-ドするcDNA BPMIを単離した。このcDNAを制限酵素により切断し,得られたcDNA断片を発現ベクタ-(pATーTrp)にサブクロ-ニングし,それぞれの断片のリコンビナント蛋白を作成した。これらのリコンビナント蛋白を抗原とした免疫ブロット法によりヒト単クロ-ン抗体5Eのエピト-プを114アミノ酸に限局することが出来た。今後さらにエピト-プの部位を細かく限局し,真の主要エピト-プを有する合成ペプチドを作成する予定である。 同時に,全BPMIより得られた120kDリコンビナント蛋白,および60kD蛋白を抗原として多数例の類天疱瘡血清との反応性を免疫ブロット法およびELISA法を用いて検討した。その結果,ELISA法は免疫ブロット法と同様に類天疱瘡患者の抗BMZ抗体を検索しうる可能性が示された。本研究により,抗BMZ抗体の多様性が分子レベルでも明らかとなり,その為ELISA法を導入するには主要な抗原エピト-プを複数含む合成ペプチドの作成が必要なことが明らかとなった。なお今後の研究が必要である。
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