研究概要 |
ス-パ-オキサイドディスムタ-ゼ(superoxide dismutase,以下SOD)は活性酸素を不均化する酵素で、哺乳類では、Cu,ZnーSOD,MnーSOD,extracellular SODの3種類が存在する。本研究では、組織中のSODに注目し、虚血性心疾患におけるMnーSODを測定し心筋傷害のモニタリングを検討した。 急性心筋梗塞患者の血清を経時的に採血し、MnーSOD,及びCPK等の逸脱酵素を測定した。MnーSODの測定は既に我々により作成されたモノクロ-ナル抗体を用いたEnzyme linked immunosorbent assay;ELISAを確立し、行った。標準抗原はヒト肝臓よりMnーSODの高収量の精製法を確立し、それを用いた。 急性心筋梗塞患者血清中のMnーSODの経時的変化をみると、再潅流例、非再潅流例ともに24時間以内の小さなpeakと発症から100時間前後の大きなpeakの2つのpeakが認められる。最初のpeak出現時間の平均は16時間、peak平均値は164ng/mlであった。一方、2番目のpeakは第3一第7病日にありpeak出現時間の平均は108時間、peak平均値は248ng/mlであった。次に他の逸脱酵素との比較行うと、MnーSOD 1st peakはCPKに似た出現様式を示しており、他方,2nd peakはCPK,GOTに比し極めて遅い出現時間を示し、CPK,GOTが正常化した後も高値を持続していた。 心機能との関連では、初回前壁梗塞の慢性期左室駆出率とMnーSODとの相関を検討した。MnーSOD 2nd peakと左室駆出率とは負の相関を認めた(r=-0.68)。 このMnーSODの遅い誘導については、腫瘍壊死因子(TNF)が急性心筋梗塞で上昇していることから、梗塞巣に浸潤する白血球系の細胞由来のサイトカインによりMnーSODが誘導され、虚血による膜障害で血中へ逸脱している可能性が示唆された。後半の上昇が心機能と負の相関を示すことと合わせ、MnーSODは梗塞巣を炎症として捉える新たな細胞障害の指標となりうる可能性があると考えられた。
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