研究分担者 |
古市 喜義 山之内製薬, 中央研究所, 研究主任
武本 寿行 山之内製薬, 中央研究所, 研究主任
中野 泰子 昭和大学, 薬学部, 助手 (20155790)
三浦 南虎 (崔 南虎) 昭和大学, 薬学部, 助手 (10146904)
戸部 敞 昭和大学, 薬学部, 講師 (90102368)
|
研究概要 |
本研究が開始された当時は,まだ我々がMACIFを発見し,そのcDNAクロ-ニングに成功してから日も浅く,MACIFに関する知見は少なかった.当時明確だった事実は,MACIFが自己補体による膜攻撃複合体(MAC)形成を阻害すること,およびグリコシルホスファチジルイノシト-ル(GPI)型膜蛋白質であること程度であった. 本研究の2年間の成果を要約すると次の通りである.(1)GPI型膜蛋白質の大量調製は現在の技術レベルでは不可能であった.(2)膜型の代わりに水溶性型の開発を試み,3種類の方法で調整した.3種類とは,ヒト尿からの精製,大腸菌による組換え型の発現,およびCHO細胞による組換え型の発現であった.(3)MACIFは77アミノ酸残基,1個のNーグリコシド糖鎖および1個のGPIアンカ-糖鎖からなっているが,尿型は両糖鎖をもつ.大腸菌組換え型は糖鎖を全くもたず,N末にMet残基を余分にもっていた.またCHO細胞組換え型はNーグリコシド糖鎖はもっているが,GPI糖鎖はもっていなかった.(4)ヒト補体によるモルモット赤血球溶血反応に対する阻害活性を測定したところ,3種類の水溶性型はいずれも膜型と比較して約0.1%の活性しか示さなかった.この結果からMAC形成阻害活性には膜結合性が重要であり,糖鎖は無関係であると結論された.(5)ヒトMACIFはヒトとサルの補体にのみ活性を示すので,リスザルを用いて腎虚血後再還流の細胞傷害に対する保護活性を調べたところ,作用機序は不明ながら有意の抑制が認められた. 以上の結果から医薬として実用化できる可能性はあると判定し,さらに研究を続行する.その場合,水溶性型に脂肪酸残基を化学的に結合させて膜結合型にすることも試みたい.
|