研究概要 |
組換えDNA技術を用いた遺伝子構造および機能の研究はラジオアイソト-プの使用量を飛躍的に増加させ,RI施設の狹隘化,汚染廃棄物の蓄積など様々な問題をひき起している。本研究の目的はRIを用いずに遺伝子の研究が行えるような方法の開発にある。既に非RI法としていくつかの方法が欧米で開発され実用段階に入ってはいるが,我々は既存の方法とは異る蛍光法を採用し全く別の角度よりこの問題に取組んでいる。採用した方法はデイゴキシゲニンで標識したDNAに,アルカリ性フォスファタ-ゼをつけた抗体を結合させ,酵素活性を蛍光基質を用いて可視化するという方法である。そのためには酵素と反応して不溶性となり蛍光を発する基質を新たに合成する必要がある。現在までにクマリン誘導体26種,ペリレン誘導体7種,フルオレシン誘導体5種,ナフト-ル誘導体46種,その他2種,合計86種の蛍光物質を合成し,(1)480〜500nm以上の長波長域に蛍光を示し,(2)反応後フィルタ-に沈着し,(3)比蛍光強度が高い,という三点に関してスクリ-ニングを行った。その結果,3ーHydroxyーNー2ーbiphenylylー2ーnaphthalenecarboxamide(HNPP)が最良の蛍光基質であることが判った。これを用いるとスポットテストで10fg(既存法の最高感度),サザンハイブリダイゼ-ションにより70fgのDNAを検出出来る。また,解像度,所要時間,反応のモニタ-,デ-タ-の保存,リプロ-ブの容易さ,試薬の安定性など要求される全ての点で他の非RI法より優れていることが実証された。
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