研究概要 |
本研究は,野外地質および室内実験データから地質体やそれに賦存する岩石や鉱床の形成プロセスを推定する作業を支援する計算機システムを設計・試作し,実際のデータを入力した小規模なシステムの試用と評価を行うことによって,本格的システムとしての実用化の可能性を探ることを目的とした。システムの開発は,(1)知識数の限られた具体的問題を扱う小規模なルールベースシステムの開発と試用というボトムアップ的なアプローチ,(2)一般的な問題である地質体とそこに賦存する岩石や鉱床の形成過程を推論するシステムの設計というトップダウン的アプローチ,ならびに(3)最終的なシステムの末端ツールとして組み込み可能な種々の観察・測定データの入力・解析ツールの開発,の3つを並行して進めた。このうち(1)については,地質体の形成過程のうち,とくに火山砕屑岩の形成過程を野外地質データから推論する対話型システムの開発を行なった。この開発にあたっては,ルールベース型のエキスパートシステム開発ツールIntelhigent Developerを使用し,教育用としてはほぼ実用レベルのシステムVolcaniclastの構築に成功した。(2)については,ウラン鉱床とその賦存地塊の形成プロセスを例にとってその知識整理と体系化を行ない,フレーム表現を用いた知識ベースの設計を行なった。また,その知識ベース上に,実存する鉱床の形成プロセスに関する知識を組み込むによって仮想的な推論動作を試行し,基本設計の正しさと問題点を確認した。(3)については,ディジタイザを使用して地形図をディジタル標高データに変換した後,解析処理を行なって表面積・体積・勾配などを計算するディジタル標高データ入力・解析システムを構築した。以上(1)〜(3)の作業成果を通じ,あらゆる地質・岩石について利用可能な汎用地質および鉱床調査支援システム実現の可能性を模索した。
|