研究概要 |
近年,哺乳動物の生殖細胞の増殖分化の機構や,受精の機構に関する研究が生化学や分子生物学の手法を用いて急速に進展している。その中で,X精子とY精子とを分離しようとする試みがヒトを中心になされてきたが,未だその目的は十分に達成されていない。本研究においては,実用性の高い大型家畜(牛),マウス,ラットの精子表面抗原に対する単クロ-ン抗体産生ハイブリド-マを樹立し,X精子とY精子とに特異的に反応する単クロ-ン抗体を取得し,両精子を分別する方法論を開発することを第一の目的とした。 更にこの過程で得られた単クロ-ン抗体の中には,精子の機能(生体反応,運動能,受精能)に関連するもの,あるいは,精子の分化成熟に関連するものも含まれていることが予想される。このような単クロ-ン抗体の認識する精子表面抗原の物質的,構造的実態を明らかにすることを本研究の第二の目的とした。 1.牛精子より得た成熟精子を抗原としてマウスに投与し,ハイブリド-マを調製した。その結果,精子にのみ特異的に反応する3種類の単クロ-ン抗体生産株を得た。これらはウシ,マウス,ラットなどの精子と反応し,部位特異的であった。すなわち,1つは精子先端部,1つは腹部,1つは尾部に反応する抗体であった。これらの抗体が精子の受精能力にいかなる影響を与えるか検討した。 2。未成熟マウス及びラットの精巣を抗原としてハイブリド-マを作製した。その結果,精原細胞ないしは精母細胞,セルトリ細胞,ライディヒ細胞などに特異的に結合する単クロ-ン抗体を取得することが出来た。これらの抗体の認識する抗原の同定,これらの抗原の精細胞分化段階における発現,そして抗原の機能の解明を目的として研究を行い,また,これらの抗原のcDNAのクロ-ニングを行った。
|