最近の障害児教育の現場で、自閉症児に対して、さまざまな手法・手技(行動療法や感覚統合訓練など)で治療・訓練が行われているが、その効果についてはすべてが必ずしも有効であるとは言い難い。これは、現場によって、ある特定の手技・手法が、「自閉症」と診断された子供すべてに一義的に実施されているためである。これらの原因は、自閉症研究において、1.病因が明らかにされていない、2.症候群として規定されていながら、症候の構造的記述が成されてこなかったこと、3.自閉症児の「発達」が症候との関連で捉えられてこなかったこと、が挙げられよう。我々は上記の2.および3.を検討可能なN式自閉傾向測定尺度(Nakatuka Scales of Autistic Tendencies;NSAT)を軸として、個々の子供に最適な手技・手法で治療・訓練を行うための教育プログラムの開発を目的としている。 現在、各種の手技・手法に含まれるいろいろな領域での課題について、その目的、方法、対象児の最適年齢および有効性などの検討を行い、随時、パ-ソナルコンピュ-タに入力(デ-タベ-ス化)している。一方、同じコンピュ-タ上で、NSATの尺度得点の自動算出、自閉症の類型の自動判定などは、既に可能になっている。今後、子供の側の条件(たとえば、暦年齢、発達の程度、NSATによって判定された自閉症類型や重症度など)から、その子供に適した(必要な)課題(群)が検索できるよう、デ-タベ-スを統合していく必要があろう。 関連研究して、自閉症のリスクがあると考えられる乳幼児をスクリ-ニングする尺度を構築し、リスク児と判定された対象に対し、先のデ-タベ-スの課題にて治療・訓練を実施し、その有効性の検討を実施中である。
|