1.目的 本研究は、ワ-ドプロセッサの思考外化と編集機能による思考支援性を実験的に実証しようとした。具体的に検討した仮説は「ワ-ドプロセッサ使用時の方が不使用より、さらにペア作業の方が単独作業より、それぞれ異なった視点からの吟味の機会が増えるので、結果として思考が深まる可能性が高い」というものである。 2.実験実施概要 予備実験の結果、短大生に「女子短大の将来」という意見文を作成させるという課題を設定した。ワ-ドプロセッサを使用しない統制群の他、単独作業かペア作業か、及び一回作業か三回繰り返し作業かの二要因を組み合わせて四実験条件を設け、その文章化に表れる思考の深まりの度合を比較した。それぞれの群につき、5件(ペア条件では一件二人一組)、計35人の被験者からデ-タを得た。 3.結果 各群の、最終意見文に見られる主題についての考えの深まりの度合を、本実験とは独立に設定された評価スケ-ル上で評定した。5を十分深いとする5段階評定値の各群の平均は、以下の通りである。 ワ-ドプロセッサ不使用・単独・一回作業条件:2.7 ワ-ドプロセッサ使用・単独・一回作業条件:3.1 ワ-ドプロセッサ使用・単独・三回作業条件:2.9 ワ-ドプロセッサ使用・ペア・一回作業条件:3.6 ワ-ドプロセッサ使用・ペア・三回作業条件:3.2 この表でみる限り、ワ-ドプロセッサを使用することは、思考を深化させる傾向があるといえる。その効果は、作文作業を話合いながら進めていくことのできる(従って異なった視点の最も介入し易い)ペア条件でより顕著に見られる。今後は、この作文の過程そのものの分析、異なった題材での実験、被験者の数を増やすなどの方策により、ワ-ドプロセッサによる外化・編集の効果をより詳細に研究して行きたい。
|