研究概要 |
1.本研究の目的は(1)炭鉱閉山後20年余を経過した筑豊地域の旧産炭地住民の生活問題の把握の一端として,高齢化と貧困化の実態を捉える。(2)高齢化にともない,旧炭鉱労働者は年金生活者となっていくが,閉山後、有利な転職も不可能で、地域に滞留し、高齢化した層に焦点をあてて、その生活問題を捉える。調査地は、福岡県鞍手郡小竹町。 2.小竹町の高齢化の実態は,全国平均をはるかに上回っており,65才以上人口は約17%を占め、1人暮らし老人は実にその四分の一である。寝たきりで家庭介助を必要とする老人、各種老人ホ-ム入所者,長期の入院患者など,多様な生活実態である。 3.高齢者の収入と暮らしの実態は,年金受給を柱としながらも,生活保護受給者数も相当の数にのぼる。旧炭鉱労働者で,年金受給資格に充分達する勤務年数を勤めあげ、炭住を建て替えた改良住宅に居住している場合は比較的恵まれたケ-スといってよい。年金額が様々な条件で少額の場合,高齢ではあっても収入をもとめて就労の必要が生じ,就労希望者は少くないが,この地域では,高齢者の就労機会は少なく今後の課額である。生きがい対策ともからめた施策が望まれよう。 4.旧炭住から改良炭宅への転換は,旧炭鉱労働組合の運動により、周囲の高層化を避け、二階建てまたは平屋として、庭付き住宅が基本になっている。これは高齢者の住環境としては有利な条件となっている。また、かっての炭住時代ほどではないが、隣・近所との生活ネットワ-クが残存する部分もみられる。しかし,それが新しい生活様式と結合できるかどうかは今後の課題として残されている。
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