19世紀末以降、学校を教師・生徒・父母の共同体ととらえる「学校共同体」の思想について、歴史的に究明することが、本研究の課題であった。 これについて、研究代表者は本年度はとくにつぎの作業をおこない成果をあげることができた。 その第一は、ワイマ-ル期前後を中心にする「学校共同体」関係の諸資料・文献を国内外の図書館をつうじて、ほぼ収集できたことである。これによって、従来まったく未知の領域であった「学校共同体」研究のための方途が拓かれることとなった。 第二に、研究代表者は研究課題の主要部分である、ナチス時代における学校共同体論の展開をアドルフ・ライヒヴァイン(1898ー1944)の活動分析をつうじて究明することができた。つまり彼がハレ教育アカデミ-教授をナチ政府によって罷免されたあと、ベルリン近傍の小村ティ-フェンゼ-の単級農村学校の教師としておこなった実践がナチズム教育体制にたいする「教育的抵抗」という意味をもっていること、「学校共同体(教育共同体)」づくりがそのために案出されたことである。 なお、この研究成果は教育史学会第34回大会(1990年10月4日ー5日)ー於:東京大学ーにおいて、「アドルフ・ライヒヴァインとティ-フェンゼ-農村学校ーナチズム体制下の教育的抵抗ー」のテ-マで口頭発表された。
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