研究概要 |
1980年から1990年にかけての約20年間は,欧米先進諸国において青年人口の減少,出産率の低下,高齢人口の急増など,人口動態に未曽有の変化が発生した時期である。そしてさらに1990年から2000年にかけての10年間は,日本,アメリカ合衆国,イギリス,西ドイツ等において,青年人口層の激減が予測されている。このような人口動態の激減は,人口増加と高等教育進学率の上昇を前提として発展してきた従来の高等教育にとって全く未知の経験であり,とりわけ1993年〜2000年の高等教育計画策定中の日本の大学審議会(高等教育部会)にとって,無視しえない課題となっている。 本研究にかかる人口変動期の高等教育計画策定のありかたをさぐるため,すでに人口変動に直面しつつあるアメリカ合衆国及びイギリスにおける高等教育政策の動向を分析した。これによると,英米において青年人口動態の減少と同時に高等教育への財源の縮小を経験していること,また人口の量的変化は学生集団の構成上の多様化をもたらしたこと,学生集団構成の多様化は高等教育の内容,方法,カリキュラム,教授団,学生の学習パタ-ンの構造的変化をもたらすことが明らかとなった。また,18歳人口の減少を過剰に重視した学生数予測は大幅にはずれ,成人学生やパ-トタイム学生などの非伝統型学生の動向がこれらの高等教育機関の生き残りの鍵であることが確かめられた。それゆえ先進工業諸国の高等教育政策の共通的特徴としては,評価システムの受入による予算配分の優先順位政策の採用,学生を消費者と位置付け,高等教育需要に対する高等教育機関の経営努力を喚起するためのPrivatization(民活化)とマ-ケティング・アプロ-チの導入,学校教育の拡大路線から成人を中心とした生涯学習システムの構築への方向などが指摘しうる。
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