研究概要 |
今年度は前年度に続き、国立国会図書館、東京都中央図書館、国立歴史民俗博物館等の所蔵資料によって文献調査を行ったほか、現地調査と資料収集の対象とした地域は次のようであった。(1)東京都北区、同八王子市、(2)長野県長野市、同戸隠山、同木曾御嶽山、同阿南町、および長野県全域(3)秋田県秋田市および秋田県全域,(4)宮崎県椎葉村、(5)新潟県上越地方。ただし文献調査の対象は上記にとどまらず、青森県津軽地方、岩手県北上地方や愛知県一円など広範にわたったのはこれも前年度同様である。 1.今年度の調査内容は基本的には前年度と同様であるが、それに加えて各地の参詣供養塔の種類と所在の把握に力を注いだ。その結果、道中記や公用文書には記録されない、各地域におけるより詳細や参詣行動が明らかになってきた。全体像については現在デ-タベ-ス化による集計作業を進めているところである。 2.また一般庶民の旅行にまで視点を広げるならば、湯治、すなわち長期間温泉地を訪れる遊山的行動も、無視できないほど大きな比重を持っていたことも明らかになった。今後この方面の実態を究明することも重要な作業になると思われる。 3.上記(5)の調査は偶然のことであったが、そうした遊山と信仰との興味ある結合事例として、調査の視野に入ってきたものである。毎年秋になると有縁講と称して、新潟県頸城地方から長野県北部地方の真宗寺院と門徒による大規模な宗教集会が営まれている。平成3年で33回目をむかえ120の寺院と4500名をこえる一般信徒が参加するまでになった。11月ほぼ1か月をかけて、交互にある温泉を訪ねては法話を聞き、一晩温泉を楽しむというものである。いわゆる寺社参詣の範疇にははいらないものの、今後これについても調査を深めていきたい。
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