研究概要 |
本研究は本来二年計画で立案されたものであって,その初年度の研究計画は主として六朝都市史料佚文の収輯というものであった。これに従い,本年度はほぼ以下の様な作業を実施し,成果をあげた。 六朝都市史料佚文を包含する文献は二種に大別できる。一は,宋元以後前の史部書,特に類書の類,及び諸書の注文であり,他の一は宋元以後の地理書及び地方志の類である。この内,前書については『水経注』,『太平御覧』『北堂書鈔』『初学記』『芸文類聚』の著名な四大類書他諸種類書,『史記』『漢書』『文選』の注文等々を精査し,後者については,『太平寰宇記』『輿地記勝』『景定建康志』『至正金陵新志』『嘉靖彰徳府志』等々の調査を行った。ただ,後者については元来その数が莫大なものであるため,予期したもの総てにわたって十分な調査を行えなかったことを遺憾とする。 かくして収輯した佚文はほぼ以下のような状況にある。まず,洛陽については,稗音代の洛陽についての重要史料である悟機『洛陽記』及び『宮殿簿』の佚文を担当数収輯した。〓については,『〓中記』以外に『〓都故事』『冀州図経』などを,建康については,旧来周知の『丹陽記』等以外に,『六朝宮苑記』『建康宮殿簿』『金陵覧古』等の佚文を収輯した。これらは現在のところ文献カ-ドに記録されたままであり、相互の校合等の文献批判的作業及びその綜合は今後の課題である。 なお、以上の佚文内容の意義を現時点で述べるならば、従来都市研究にほとんど利用されたことがないものも少なくなく、従って、この佚文を利用すれば、研究が一層進展することが期待されるのである。
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