研究概要 |
1900年以前におけるキリスト教の中国伝道は、唐・元時代の景教、明・清時代のカトリックおよび清代のプロテスタントの3部に大きく分けることができる。本研究はこれらのそれぞれについて、キリスト教宣教師がどのような伝道方法を採ったかについて、それぞれの時代的背景と関連させながら考察した。特に中国に来た宣教師が、中国人に対する伝道を目的として刊行した中国語著作について具体的に調査研究し、その内容を分析することによって、中国キリスト教史の問題だけではなく、東西文化接触の問題に関しても明らかにした。 具体的にはまず第一に、ホブソンB.Hobson(中国名、合信)が執筆した中国語科学書『博物新編』について考察し、第二に、入華プロテスタント宣教師の中国語著作のわが国への流入に対し、幕末期仏僧の対応がどのようであったかについての一例として、勝国道人が執筆した『護法新論』について究明した。第三に、入華プロテスタント宣教師が刊行した中国語著作を、(1)聖書の中国語訳,(2)聖書以外の中国語布教書,(3)西洋近代学術の解説書もしくは西洋事情の紹介書の3種に分けて、それぞれの伝道史的意義を大きく把握することに努めた。第四に、マッカ-ティ-D.B.McCartee(麦嘉締培端)の中国および日本における活動について調査し、中国語著作の中では『真理易知』に重点をおいて研究を進めた。第五に、マルティンW.A.P.Martin(丁 良)の中国伝道初期における中国語著作について調査し、その内容を考察すると同時に、彼の多方面的な活動を具体的に明らかにした。
|