研究概要 |
唐の中頃,安史の乱とそれにつづく節度使の反乱のため,北魏以来3世紀にわたって行ったきた賦役制度(いわゆる租庸調制)が崩壊,徳宗は建中元羊(780)楊等の献策を入れ,これに代えて両税法を施行した。この両税法は,その後幾多の手直しを経ながらも,明の中頃一条鞭法に代わるまで,約8世紀間,正税として行われた。それゆえ,租庸調制から両税法への転換は,中国税制史を画する変革であったといえる。 本研究は,既発表の論文の再検討を主とし,欠けている部分の補充および唐代における各州の戸数の移動表とその地図化をおこなった。その成果は「両税法成立史の研究」と題し,近く出版する予定である。論文の構成は,前編 唐代賦役制度の再検討 本論I建中初羊の年支両税と両税解手・両税銭 II唐の地税とその展開 III唐の戸税とその展開 IV江南の折租納有 V夏税・秋税の源流 VI塩運改革と通貨の動き VII中世農業技術の展開 VIII唐代両税・三限版 IX唐代両税法の地域性 後編 中国複合文化試論 付 唐代編戸の移動表・図 のごとくである。 本研究の新しさは,安史の乱によって租庸調制が崩壊し,租庸調制時代にあった地税と戸税が増額されて両税法ができたとする従来の見方に対し,被災した華北では地税が主となったが,戦火をまぬがれれた江南では,戦前から行なってきた戸等に応じて租を布で徴するやり方を発展させたものであり,安史の乱後,経済の重心が江南に移ったことにより,それが基本税となり,両税法となったとした点にある。その説明に,前記の「唐代編戸の移動表・図」を利用しているのは,近年とくに発達している情報科学を歴史学にとりいれたものである。
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