研究課題/領域番号 |
02610179
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
丹下 栄 下関市立大学, 経済学部, 助教授 (10179921)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1990年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | サン・テュベ-ル / 在地的市場 / デスピィ学派 / アルデンヌ / 中世初期 |
研究概要 |
1.この研究課題は、私が数年来進めているカロリング期西欧における地域経済成立過程の研究の一環をなすものである。時間的制約もあって北フランス・ベルギ-地域の初期市場を綱羅的に検討することができなかったが、以前から手がけていたサン・チュベ-ルの市についての研究を取りまとめることができた。その要旨は以下の通りである。(1)サン・テュベ-ル修道院所領は、修道院本拠地であるサン・テュベ-ル付近で交差する東西、南北の交通路に対応して編成されていた。この構成がサン・テュベ-ルの中心地機能、とくに市場地としての機能の維持に貢献した。(2)サン・テュベ-ルは単なる所領編成の中心ではなく、多様な階層に属する外来者を迎えるアルデンヌ西部における宗教的中心地でもあった。したがってそこで開かれる市場の性格も周辺地域の経済状態に規定された。(3)アルデンヌ西部では農民層の富裕化、貨幣経済の浸透が進行し、在地的市場が不可欠な状況が現出していた。(4)サン・テュベ-ルの市場は、周辺地域の経済発展に支えられている点ですぐれて在地的性格を示しているが、一方多様な社会層に属する人々を集めている点は、市場の超領主制的性格をもうかがわせる。 2.ひきつづき、パリ地方に所在する諸市場の検討に着手した。第1段階として行なった、流通の実態と構造を解明する作業では、この地では地域内・地域間・国際的という3層の流通活動が相互に連関しつつ存立し、また年市と週市の間にも週市を媒介とした年市来訪者への食糧供給、年市による近隣住民の生活リズムの規定などをて通じて一定の連関が認められることが明らかになった。詳細は近々雑誌論文として公表する所存である。 3.今後の課題としては、パリ地方の各市場の個別研究、とりわけ中世初期の年市としてきわめて大きな意味を持っていたサン・ドニの市を地域史、所領経営史の枠組の中でさらに詳しく分析したいと思う。
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