研究概要 |
1.EC市場統合のため,EC委員会は,加盟国の保険事業の国家監督をできるだけ規制緩和せしめると同時に,そうした母国での監督のみで保険の域内取引の完全自由化を目指して努力を重ねている。その際に重視されるのは,(1)EC各国で保険料率と保険約款の国家監督を原則的に廃止し,保険の価格と商品の自由化をはかることによって,自由競争を促進すること,および(2)域外諸国の保険者に対しても,相互主義原則により,同様の扱いをなすべく,域外諸国政府にも同様の国家規制の緩和が求められることの二点である。 2.その際に,日本の対応のために参考となるのは,ECの周辺に位置してこれと密接な経済関係に立ちながら,ECの保険国家監督規制緩和の動向に歩調を合わせようと努力しているEFTA構成諸国の努力の現状である。こうした観点から,今回の研究では,EC,ドイツ,スイスの最新事情に焦点を合わせて検討を加えた。 3.保険事業の国家監督には,(1)厳格ないわゆる実体的監督主義をとるドイツをはじめとする大陸方式と,(2)比較的自由で自主規制を尊重するイギリス方式とがあり,これまでのECの方針を見るかぎり,後者のイギリス方式の優位性が示されている。すなわち,世界規模の市場を前提にすれば,いわゆる実体的監督主義はこれに適合しないことが明らかとなりつつあるといえよう。 4.平成3年7月に公正取引委員会が「独禁法適用除外制度の見直し」で指摘したのは,一定範囲の損害保険事業だけに関する問題点であったが,大蔵省は生命保険料率の認可制度を撤廃し,94年度からこれを自由化する方針を最近表明した。保険業法改正作業の過程で,日本の実体的監督主義も大幅な規制緩和の方向へ向かおうとしているのである。
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