研究概要 |
犯罪人引渡法の基本原則および重要問題を解明するべく,欧米の文献を参照しながら,研究に取り組んだ。しかし,短い研究期間の間に思うような研究成果を挙げられるものではない。なんと言っても,わが国の研究は,欧米のそれに比してはるかに立ち遅れているのである。しかも,この分野の研究を志す者は,わが国にはほとんどいない。研究者の層が厚くなれれば,一国の研究水準が向上するはずはない。 本研究においては,裏面記載の研究成果の研究成果を一応、挙げることができた。 「略式の犯罪人引渡し」は,わが国には知られていないが,欧米では3分の2以上の引渡事件がこの方式で処理されている由である。わが国の逃亡犯罪人引渡法を改正して,この制度を導入する必要がある。 国際刑事司法共助(広義)における「相互主義」の意義は,わが国では厳格に解されているが,国際的には緩やかな解釈が探られる傾向にある。このことを認識して,わが国は,国際実務を処理する必要がある。そうでなければ,多くの点で不都合が生じる。 「政治犯罪」の概念は,国により時によって異なる。その差異を注目すべきである。わが国では,あまりにも古典的な概念が,今なお一般に通用しているように見える。この点を認識しないと,外国への犯罪人引渡しにあたり,重大な不都合を招来しかねない。 本研究では,以上の諸点を指摘した。 せめて5年間にわたる研究によるのでなければ,犯罪人引渡法の一応の研究成果を挙げることはできない。この点,御理解をお願いする。
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