研究概要 |
1. 本年度は、長年の念願であった米沖縄占領軍(RyーCom,FEC)のTelephone Directory, 1951ー72(25冊)を県議会図書館および沖縄市立博物館より収集できた。しかし、Tokyo GHQ Telephone Directoryと異なり、人事の掲載が不完全であることも判明した。そのほか、琉球大学、那覇市史編纂室、沖縄タイムス社などから沖縄諮詢会、沖縄民政府記録などの第1次資料を入手できた。 2. 沖縄現地に研究調査旅行し、大田昌秀(現知事)、琉球大学の宮城悦二郎教授、我部政男教授、保坂広志助教授などから沖縄戦、占領下沖縄の労働運動・教員運動、基地反対闘争などについて聞き取りをおこなった。また、上原康助(国会議員)、神山操(全駐労地区委員長)から沖縄軍政について話を聞いた。 3. 資料分析 昨年度収集したUSCAR(琉球米民政府)関係資料の一部を分析し、次の諸点が明らかとなった。(1)従来、不明であった占領初期の人口、労働力、男女別雇用者数、年齢別雇用者数についての統計を解明した。(2)全駐留軍労働組合結成の背景に国際自由労働組合連合および琉球軍司令官ブ-ス書簡の「入力」があったことを実証した。とくに、ブ-ス書簡はそれまで軍従業員の団結権・団交権に消極的・否定的であった軍当局が、なぜこの時点(1960年日米安全保障条約改定直後)に団結権を認めたかの謎を解明する鍵となる。(3)沖縄の労働3法のうち、労働組合法は日本本土のそれよりもアメリカのタフト・ハ-トレ-法に近い内容をもち、労働基準法は米国のFair Labor Standard Actよりも日本本土の労働基準法に近いことが分かった。沖縄の労働法構造は軍・民の2重構造になった原因も解明できた。
|