研究概要 |
1.株価收益率を多変量時系列として,周波数領域で解析した。 (1) ある企業の株価收益率が他の企業の株価收益率と比べ,時系列としてどの程度遅れているかを最大法で推定した。鉄鋼業界では,新日本製鉄を中心として,1社の例外を除いてほぼ同じ動きをし,遅れの構造もサンプリング問隔によらず安定であることが分かった。名油業界では2週間程度の時間遅れが認められることがある上に,遅れの構造も不安定である。業界による差の意味については,さらに検討を続ける。 (2) 一部上場企業のうち8業界各30社,合計240社の株価收益率変動と業界平均変動の類似性のデ-タ解析を行った。次に,統計的基準による人工知能構築支援システムMicro strategy(AT&Tベル研究所,Galeが開発)を用いて,どのような統計量が人間の主観的分弁を反映するかを調べた。その結果,スペクトル,クロススペクトルによる評価が,十分に人間の判断に代わりうることが分かった。これは,「株価收益率の類似性は時間領域の統計量に関連する」という定説に反するものであり,さらにデ-タ解析を続けたい。 2.株価変動を記述する確率分布族として,安定分布に注目しその形状パラメ-タの推定法を研究した。 (1) PaulsonおよびKlebanovの推定法をシミュレ-ションにより比較し,前者の方が秀れていることを確かめた。またKlebanov推定量を改善するため,事前に与える定数をミニマックスの意味で最適化する方法を考案した。 (2) 尤度方程式を無限級数で表わし,近似最尤推定量をニュ-トン法で求める等法を考案した。フィッシャ-情報量の無限級数展開も試みたかつ打切り誤差の評価ができていない。
|