研究課題/領域番号 |
02630021
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済事情・政策学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 直志 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (10210460)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1990年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 医療需要 / 機会費用 / 計量分析 / 勤労男子・女子 / 弾力性 |
研究概要 |
本研究は、国民の医療サ-ビス受益率の違いは則に保険加入者間の金銭的診療費の相違とみるのではなく、通院することによって犠牲となる仕事と時間(機会費用)の大小が受診率に大きく影響していると仮説をたて検証した。結果として、国民の間で如何にしたら医療サ-ビスが公平に得られるかを考察している。本研究あたり、米国では医療サ-ビスが国民の間でどのように受益されているか知るために平成2年6月1日から8月22日まで渡米し、私が所属する米国のシンクタンク(ナショナル・ビュ-ロ・オブ・エコノミック・リサ-チ)にて医療分野の専門家から意見を聞き研究をすすめた。 本研究においては、家計の活動を消費活動ばかりではなく生産活動(例えば、家計構成員の健康)もしていると仮定している。トランス・ロッグ費用関数からコスト・シェアー関数(つまり、要素需要関数)をもとめ、計量分析している。対象となっている要素とは、医療・食料・住宅・衣類等の市場財に加え、勤労男子(25歳〜39歳)と勤労女子(25歳〜39歳)の労働以外の日常活動(睡眠・通院・家事)である。 推定結果は、夫婦共働きの家計においては医療に対する所得弾力性(所得が1%増加すると、その消費は何%変化するかという数値)は2.29であり、食料(所得弾力性は0.19)・住宅(0.76)・衣類(1.68)より数段大きいことがわかる。勤労者家計の医療消費の伸び率は所得増加率の約2.3倍で、この医療需要の伸びに対応する医療供給が期待できない場合、将来医療費の高騰は避けられない。 壮年期の勤労者は定年退職した人より一般的に健康であると考えられるが、前者が病院などで多くみられないもう一つの理由は機会費用の高さである。賃金の上昇は彼らの医療サ-ビスの利用を低めている。賃金の上昇に対して勤労男子の病院の利用度(診療に費やす時間)の弾力性はー4.31で、勤労女性の場合ではー0.53という研究結果が得られている。勤労男性は、賃金が1%上昇すれば病院の利用時間が約4%減少することになる。賃金と病院利用頻度のこのような負の関係から、医療サ-ビスを勤労者に低い機会費用で供給することが今後の医療システムの重要な課題である。供給量を増加させる他に、対処の方法として例えば、1)病院のアポイント制を強く推進する。2)より多くの企業に診療室をもつことを義務づけ推進する等が考えられる。
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