EC市場統合を始めとする一連のEC統合は、欧州経済の低迷や東欧諸国・ソ連の政治的・経済的・社会的混乱が続くなかで、遅々として進まず、大幅な後退を余儀されている。こうした事態は、EC市場統合への日欧米企業の対応にも色濃く反映し、対応に目新しい動きは見られない。 EC市場統合への日本企業の対応ー(1)EC進出動機は多様化しているが、グロ-バル化戦略の一環、輸出から現地生産への転換、現地・第三国への販路拡大、情報収集が主な動機になっている。(2)国別では英国、ドイツ、フランス、業種別では電気機器、機械、化学の進出が目立っている。(3)進出先国の主な決定理由としては、物流の条件が地理的に良い社会基盤が整備されている、労働者の質が他と比べて良い等が挙げられる。(4)日本企業は種々の対応を講じながら、生産・経営・研究開発面で着々と現地化を進めている。 EC市場統合への欧米企業の対応ー(1)とくに欧州企業では、日米企業と互角に戦える産業、例えば、航空、軍需、通信機器、重電機、自動車等の分野で、国境を越えた再編成を積極的に展開してきたが、欧州経済・政治の深刻な低迷・不安に直面して、再編の見直しを迫られるなど、厳しい状況に立たされている。(2)欧州企業同士のM&Aも、米国企業による欧州企業のM&Aも、こうした事態に直面して、著しく減少した。 本研究を通じて学んだことー(1)新しい欧州づくりは欧州人自らの手で完成させたいというのが、欧州人の願いであること。(2)日本企業の真の汎欧州化は、生産・経営・研究開発の現地化を通じて、欧州人の生活の質を維持・向上させていくことにあること。
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