研究概要 |
今年度に行った研究によって得られた成果は次の通りである。 1.高い階数をもつ楕円曲線の構成。モ-デルヴェイユ格子の立場から従来難解とされてきたネロンの結果('54)を解明し,有理数体上の階数が11以上の楕円曲線の無限な族を構成するアルゴリズムを確立した。さらに,実例を構成した。これは世界初の成果である。このために、当研究の交付申請書で述べた如く,高精度のパ-ソナルコンピュ-タが必要であったが,十分満足の行く成果を得た。 2.モ-デル・ヴェイユ格子に付随するガロア表現の研究。この方法で,本質的に非ア-ベル的な、有理数体のガロア拡大,ならびにガロア表現が得られる。これは理論的にも非常に興味深い結果であるが,我々の方法は、実例を構成するにも適している。1.と同様,実例構成には本研究でサポ-トされたコンピュ-タが大いに役立った。 ここで得られた結果は,モ-デルヴェイユ格子に関する他の結果と共に,国際数学者会議(ICM90,京都)の招待講演において公表した。 3.以上のように,モ-デルヴェイユ格子の理論は既に十分豊かな内容と応用を有しているが,筆者の計画ではこれらはまだその第一段階にすぎない。標記の課題のうち,整数論への応用,幾何学(古典的な幾何,および代数幾何)への応用は既に成果を収めているが,解折学への応用は今後にまつものである。この他、より一般的な枠組で行うべき研究予定も徐々に遂行されるであろう。 おわりに、当補助金による時宜を得た援助を厚く感謝したい。
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