研究概要 |
生成過程と反応性の面からC_3H_3^+イオンの構造についての知見を得るために、3種のC_3H_4分子(シクロプロペン,アレン,及びメチルアセチレン)から光イオン化で生ずるC_3H_4^+イオンのそれぞれを3種のC_3H_4と反応させ,生成するC_3H_3^+の飛行時間(TOF)スペクトルの測定を行った。実験はしきい電子ー2次イオンコインシデンス法を用い,しきい光電子をTOFの基準とした。したがって,得られたスペクトルは内部エネルギ-が選択されたC_3H_4^+の反応から生ずるC_3H_3^+のスペクトルになっている。 これらの反応にはC_3H_3^+を生ずるチャネルのほかに,C_3H_5^+,C_6H_7^+を生成するチャネルがあるが,測定の結果、後二者のTOF分布は非常にシャ-プであるのに対してC_3H_3^+のTOFだけが異常にブロ-ドになり,親イオンのTOFとC_6H_7^+のTOFの間の全領域にわたって分布していることがわかった。このC_3H_3^+イオンの異常性は、反応分子構造にはよらずどの系にも共通して見られるが、この領域内での相対強度(分布)は反応系に依存する。これらのスペクトルの解析から,シクロプロペンイオンとシクロプロペン又はアレンとの反応では生成機構の異る2種類のC_3H_3^+が生成することが明らかにされた。反応室に反応ガスの代りにアルゴンを入れた実験ではC_3H_3^+は生成しなかったことから,2つの機構はどちらもC_3H_4^+の衝突誘起解離過程ではなく,中性反応分子の方もC_3H_4であることによるものであることがわかった。また、衝突の相手としてC_3D_4(アレンーd_4)を用いた場合に生ずるC_3D_3^+のピ-クは1種類しかなく,C_3H_3^+とは異った位置に現れる。以上のことから,2種類のC_3H_3^+はいずれもC_3H_4^+イオンからH原子が引抜かれてできるものであることがわかった。これらが星間空間で異った役割を演じていると考えられている直線状及び環状構造のものに対応するかどうかを検討中である。
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