研究概要 |
原子核構造の研究において最も重要な課題は,変形でありそれに伴う回転運動である。変形した原子核の回転運動は内部座標を導入し,その座標系の回転と内部運動に分離して取り扱われる。内部状態は核種によってそれぞれ内部対称性を持っていて、スピン系列などに見られるように回転バンドを特徴づけている。この研究課題のもとで,原子核の回転運動が速くなるにしたがって,変形がどのように成長し,その内部対称性がどのように変化していくか,内部対称性を特徴づける変数の動的振る舞いについて,幾つかの成果が得られた。多くの核種の低い角運動量状態では,軸対称性があると考えられている。集団的回転運動は対称軸に垂直に起こるから,回転を始めると自ずから軸対称性は壊れる。その際変形が回転軸方向に延びるか縮むかは,核種や角運動量領域によって異なる。この研究課題でも,オスミウム182で,基底バンドでは延びるのに対し回転整列バンドでは縮むことを示した。この現象はシグナチャー逆転現象として現われる可能性がある。事実,ボア模型で回転・振動の結合符号を人為的に逆転することによってシグネチャー逆転現象が再現できることを,強結合模型を使って示した。非軸対称性が成長すれば内部座標軸から参照した角運動量の方向が運動するワブリングの自由度が重要になってくる。これらの運動は非線型性が強く,微視的取扱いには時間に依存する平均場近似が適切であると考えられている。この方法は古典的描像をもっているため量子化が必要で,量子化の手続きとして周期解を求める必要がある。この研究課題では,非軸対称性を表わす力学変数ガンマとワブリングの自由度が織りなす動力学を研究した。内部座標系を導入する方向における古典量子化の方法を提示し,可解模型に対し実行し,その方法の妥当性を検証した。
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