研究課題/領域番号 |
02640238
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
核・宇宙線・素粒子
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
前田 恵一 早稲田大学, 理工学部, 教授 (70199610)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1991年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1990年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 一般相対性理論 / 宇宙論 / 数値的相対論 / 非一様宇宙 / ブラックホ-ル / 量子宇宙論 / 宇宙の相転移 / 宇宙の大構造 |
研究概要 |
本研究ではまず数値的宇宙論の定式化を行った。申請者達により宇宙論の問題を数値的相対論として扱うため考案された新しい方法は、重力崩壊のときのテクニックを充分に活用できるもので、今までの数値的相対論の研究の自然な延長上にある。この定式化を用い、インフレ-ションの普遍性問題の解決のため、簡単な場合として宇宙項のみ存在する場合の1次元面対称時空のシミュレ-ション計算を実行した。Goldwirth,Piranは1次元球対称の場合に計算を行い、インフラトン場の非一様性のスケ-ル長が、地平線より大きな場合インフレ-ションが起こることを示している。我々はその問題と相補的な場合、つまり重力波による非一様性がインフレ-ションにどう影響するかを考えた。結果は、特異点に崩壊して行く様な場合は存在せず、すべて一様・等方なde Sitter時空に進化していった。このことはインフレ-ションの普遍性を支持する。この結果はGoldwirth、Piran達のものと異なるが、それが重力波による非一様性の特性か、仮定した対称性によるものがどうかは、現時点では、明かでない。 また、本研究の大きな成果として、これらのシミュレ-ションなどをもとにし、インフレ-ションの普遍性問題に関する新しい仮説、“Gosmic Hoop Conjecture"を提案し、宇宙項が存在する場合の非一様性空の進化のようすを解析的および数値的に解明しつつある。この結果は近い将来国際会議および学術雑誌に発表の予定である。 さらには、宇宙における非一様性の生成・進化、特に、宇宙初期の相転移に伴う泡構造やブラックホ-ルなどの非一様性の生成とその進化の問題、に関しては、主に、一般化されたアインシュタイン理論に基づいた研究を行った。インフレ-ションそのもののモデルに関しては、我々はsoft inflationを提案しているが、そのモデルによると理論に含まれるパラメ-タの微調整は必要なく、インフレ-ションを導く自然なモデルと考えられる。また、La、Steinhardtの提案しているextended inflationは、荒い評価では生成された泡の作る非一様性が観測と矛盾することから、オリジナルなモデルは否定されているが、実際にはその泡の膨張則はより厳密に計算されなければならない。その解析を行った結果、extended inflationの初期にはこれまで考えられていたのとは異なるタイプの相転移が起こることが明らかになり、観測と矛盾するかどうかはさらにシミュレ-ション計算等を行う必要のあることを示した。また、このextended inflationが正しいとすると、old inflationで佐藤達によって提案された宇宙の多重発生が起こり得ることも示した。 一方、銀河などの構造形成問題は、宇宙における非一様性の問題としてもう一つの重要なテ-マである。ここでは、この構造形成問題が「一般化されたされたアインシュタイン理論」の枠内で自然に理解できないかを考察した。nonーminimal couplingがある場合、密度ゆらぎが十分増幅されるモデルがあるが、残念なことにその宇宙モデル自身は見かけの“重力定数"が負になる領域まで進化し、不自然なものといわざるを得ない。
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