研究概要 |
ドハ-ス・ファンアルフェン効果はフェルミ面の形状,キャリアのサイクロトロン質量及び散乱緩和時間を決定する最も有効な実験手段である。本研究は希土類化合物やウラン化合物の重い電子系で約10種類のフェルミ面の性質を明らかにした。ドハ-ス振動が検出されるためには,低温・強磁場の実験条件以外に良質な単結晶を必要とする。我々はドハ-ス振動が検出できる良質な単結晶育成も同時に行った。以下研究成果を要約して示す。 (1)RIn_3(R:希土類元素)ではR=La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gdまで良質な単結晶育成に成功し,そのフェルミ面の性質を明らかにした。大きな知見として3つある。第一は,サイクロトロン質量と散乱の緩和時間に関する問題である。つまり,5倍サイクロトロン質量が重くなると,そのフェルミ速度は5分の1に減少し,その結果緩和時間が5倍大きくなることをCeIn_3の2つの軌道をもとにして明らかにした。次にNdIn_3の反強磁性体では,4f電子のないLaIn_3のフェルミ面に磁気ブリルアンゾ-ンを考慮に入れて,フェルミ面が構築できることを明らかにした。また磁気開通の現象も見出した。 (2)重い電子系の重要な問題の一つにスピン相関に関するメタ磁性がある。我々はLaRu_2Si_2のフェルミ面を明らかにすることにより,CeRu_2Si_2の実験結果と対比させた。その結果CeRu_2Si_2の4f電子は重い有効質量を持つ遍歴電子系であることを明らかにした。ただし,メタ磁性転移後の性質は未解決な問題とした残った。 (3)強磁性体のUGe_2の純良単結晶育成に成功し,そのフェルミ面を明らかにした。我々はウラン化合物は基本的には3d電子系と同様に遍歴電子系ではないかと考えるにいたった。
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