研究概要 |
1.緒言 B2型の結晶構造をもつVーRu合金は,両者が等組成の近傍で格子が不安定になり,温度の低下につれて構造変態をおこす。これまでの代表者らの研究によれば,VとRuの割合を変えたり,Vサイトを非磁性元素TaやOsで置換して電子濃度Zを変化させると,構造変態は著しい影響を受けることから,この変態は電子的な要因で生起された2次の相転移であると考えられる。本研究では,3dの磁性元素であるFeをVーRu合金に添加することによって,電子構造に変化を与え,それによって生じる構造変態への影響について考察する。 2.実験方法 試料を三方ア-ク炉により作製し,X線回折装置とX線マイクロアナライザ,および電子顕微鏡をもちいて金属組織学的な評価を行う。電気抵抗は直流四端子法により,また帯磁率はSQUIDをもちいて,4.2K≦T≦400Kの範囲で温度の関数として測定する 3.実験結果と議論 (1)VーRuに非磁性元素TaやOsを添加したB2型擬二元合金の構造変態温度T_Lは,VーRu二元合金の場合と同じZの普遍的な関数で記述される。第3元素の添加によってZが6.50から6.38まで減少すると,T_Lは約300Kから5K以下にまで低下するが,この振舞はバンド・ヤ-ン・テラ-効果によって定性的に説明される。 (2)VーRuに3d磁性元素Feを添加した場合には,上で述べたT_LとZの関係に著しい影響が現れる。たとえば,V _<50>Ru_<48>Os_2およびV _<50>Ru_<46>Os_4のT_Lは,両者ともほぼ等しく約300Kであるが,OsをFeで置換したV _<50>Ru_<48>Fe_2およびV _<50>Ru_<46>Fe_4においては5K以下に低下する。この実験事実は,FeがOsと同じ価数であることを考えると,Feのもつ磁気的な作用によって電子構造が変化し,T_Lの大幅な低下をもたらしたものと考えられる。
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