非局所性はメソスコピック系の重要な概念であり、いわゆる電子波の干渉効果を引き起こす一体の波動関数の位相コヒ-レンスに起因する非局所性と、系の保存則に起因する二つがある。本研究ではメソスコピック系の量子伝導現象にこの二つの非局所性がどのような役割をはたすかを明らかにするため、「ウイグナ-関数を利用した、理想化一次元バリスティック伝導チャンネルの理論的研究」を行った。 散乱ポテンシャルを簡単のためデルタ関数とし、リ-ド線での散乱がない理想的なバリスティックチャンネルを考えることにより、我々はウィグナ-関数を厳密に解くことができ次の結果を得た。 (a)電子密度が伝導チャンネルの散乱ポテンシャル近傍で振動するフリ-デル振動に類似の振動現象がメソスコピック系でも存在することを見いだし、これが電子波同士の干渉効果に起因することを明らかにした。 (b)リ-ド線内に散乱がない理想的な一次元伝導チャンネルでは、チャンネル長が電子のフェルミ波長に比べて十分長い場合、2端子コンダクタンスがデルタ関数型の散乱ポテンシャルの強度に無関係に量子化される。この量子化は、電子波の位相情報を壊す散乱がリ-ド線で無視できる場合、左右リザ-バ-間に、電流保存則に起因する強い相関がはたらくことにより生ずる現象である。微細加工技術が進歩し、この条件を満たす小さなバリスティック構造がつくられるようになれば、電子波の透過確率によらない量子化が観測されるものと予測される。 この量子化は、リ-ド線で電子波の位相情報が失われる前提のもとで導かれているランダウァ公式からは、導くことができない。 なを、メソスコピック系の代表的な量子干渉効果であるAB効果のうち、研究例の少ないスカラ-ポテンシャルによるAB効果に関する研究も行い学会、研究会などで報告した。その詳細に関しては現在論文を作成中である。
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