研究概要 |
液体ヘリウムの起流動性はボ-ズ凝縮による相転移に伴って現れる。この超流動ヘリウムの諸性質は素励起によって決められる。この研究の第一の課題は,素励起をエネルギ-と運動量の関数として規定する動的構造因子が,ポ-ズ・アインシュタン凝縮によって質的に変わるかどうかである。また,超流動ヘリウムの温度変化は,約1Kまでの温度ではフォノンによって,それ以上の温度ではロトンによって決まる。この研究の第二の課題は,この重要なロトンの諸性質の温度変化を正確に決定することにある。 実験装置として, ^3He循環型光散乱用クライオスタット,アルゴン・イオン・レ-ザ光源,ダブルモノクロメ-タ分光器,2次元マルチ・チャンネル光子計数検出器を用い,高精度・高分解能の測定を行った。 実験およびデ-タ解析から得られた結論を以下にまとめる。(1)スペクトル形状と強度は,全ての温度で,最低温度の実測スペクトルと単一ロ-レンツ関数との畳み込み積分で再現できる。(2)これは,ボ-ズ凝縮によって動的構造因子が質的に変わらないことを示す。(3)ロ-レンツ関数の幅はロトンの寿命に対応するが,その温度依存性は,ロトンーロトン衝突を考慮したランダウーハラトニュフの理論から約1.8K以上でははずれる。(4)これは,ロトンの寿命を決める因子として,転移点近傍でのボ-テックスの重要性を示している。(5)実測スペクトルに最適合するロ-レンツ関数のずれから,各温度におけるロトンのエネルギ-を決定することができ,転移温度に向ってわずかに減少し,転移温度より上ではほぼ一定であることが分かった。
|