研究概要 |
1.ガス吸着および比熱測定用クライオスタットの完成 温度制御装置を用いて,シリカライトへのガス吸着を行い,その後断熱系に切り替え比熱測定が可能なシステムを完成させた。これによって希ガスのシリカライトへの吸着特性と比熱の測定を行った。 2.シリカライト細孔の希ガス吸着特性および比熱の測定 細孔構造が一次元的なZSMー23と三次元的なZSMー5のシリカライトについての測定を行った。吸着ガスは, ^3Heおよび ^4Heガスについては,吸着特性と比熱の測定を終了したが,他の希ガスについては現在進行中である。 3.理論的考察および研究の成果( ^3Heおよび ^4Heの結果について) (1)一次元細孔中の ^3Heおよび ^4He 細孔径が約5Aの一次元細孔を有するシリカライト中の ^3He, ^4Heの比熱は1K以上で温度に比例する。その比例係数の吸着量依存から,この状態が一次元固体ではなく,準量子流体状態であることがわかった。 ^3He, ^4Heともにほぼ同様な結果を与えていて,量子統計の違いに伴う変化は一次元空間の制限のためか現れていない。しかし,本研究により,このような極限的な細孔中で極低温においてヘリウムの流体的挙動が明かにされた。 (2)三次元細孔中の ^3Heおよび ^4He 一次元細孔とは低吸着量かつ極低温で ^3He, ^4Heの比熱は異なる挙動を示した。それを説明するモデルとして,細孔の交差空間を立方体として,その中の一量子粒子の状態を考えて比熱を計算すると測定結果とよく一致する。よって本研究により,ヘリウムの極低温における微小空間での量子効果が明かにされた。
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